民法(相続法)の改正①
2019年以降、改正民法の施行(適用の開始)が段階的に進んでいます。
2020年には、民法のうちの債権法(取引に関するルール)の改正法が施行されます。
社会の取引の基本的ルールの改正ですので、業種によっては大きな影響を受けることもありそうです。
この改正債権法の施行に先んじて、改正相続法が2019年から順次施行されています。
こちらも相続に関する基本的ルールの改正で、今後の遺産相続に大きな影響が生じるもので、現に2019年に発生した相続(施行後にお亡くなりになった場合)については基本的に新ルールで遺産分割協議等がされることになります。
今回は、改正相続法のうち「特別の寄与の制度の創設」について、事例をあげてご説明します。
事例
Aさんは、夫Bさんの両親と結婚以来同居を続けていましたが、Bさんのお母さんよりも先にBさんが亡くなってしまいました(Bさんのお父さんはBさんよりも先に亡くなっています)。
Aさんは、Bさんが亡くなった後も、Bさんの両親との同居を続け、Bさんのお母さんの介護を長年続け、お母さんが亡くなりました。
AさんとBさんの間に子どもはいませんが、Bさんには、妹のCさんがいます。
Aさんの長年の介護の苦労は相続に反映されるのでしょうか。
旧相続法のルール
この事例では、Bさんのお母さんの相続人は、妹のCさん一人となります。
Aさんは相続人ではないため、相続分を求めることができません。
この点、Aさんが相続人の場合は、旧相続法でも規定されていた(新相続法でも廃止されていません)寄与分を主張して、自己の相続分に加算を求めることができました。
しかし、Aさんはそもそも相続人ではないため、寄与分を求めることができないのです。
したがって、原則としてAさんの苦労は相続には反映されないことになります。
改正相続法~特別の寄与の制度の創設~
改正相続法では、特別の寄与の制度が創設されました(2019年7月1日施行)。
特別の寄与の制度
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、相続人に対する金銭請求を行うことができる。
改正相続法では、この特別の寄与の制度により、Aさんは、Cさんに対して、長年の介護に関して、一定の金銭請求ができることが可能となりました。
ただし、Aさんは相続人になるわけではなく、相続人であるCさんに金銭請求を行い、Cさんが応じない場合は、家庭裁判所にて判断を求めることができるにとどまります。
いずれにしましても、改正相続法を用いることで、相続人ではないが介護等を担っていた親族も被相続人(亡くなった方)の遺産に対して、一定の範囲でその労苦への対価を求めることができるようになりました。
まだ施行されて間もない制度であり、「無償」という要件の具体的な内容や、金銭請求の算定方法・上限等の事例の集積が待たれます。
また、事例のお母さんの視点からは、Aさんに報いるためには、生前に贈与や遺言を活用するなどの生前に準備をすることが期待されます(この点は、旧相続法時代と同様ですね)。