労働問題

アリオン法律事務所・執務室

Q 社員から未払い残業代の請求を受けた。
Q 休職を続ける社員を解雇したら訴えられた。
Q 社員からセクハラの訴えを受けた。

企業は人からなります。企業にとって、労働問題は、企業の防衛・発展にとって根幹といえる部分です。経営者の都合を重視すれば、契約自由の原則のもと社員の待遇の変更・解雇(解約)は一方的にできることになりますが、経済的・社会的力関係に劣る労働者が不利とならないよう、労働法規が整備され、労働者の保護が図られています。

このため、労働紛争が発生した場合、経営者が不利な立場に立たされることが多くあります。

労働者の訴えに速やかな対応をとらなかったために、労働紛争が発生してしまうと、企業の対外的なイメージの低下に加え、経営者・社員間、社員同士の亀裂、モチベーションの低下等、経営に深刻なダメージを与えることにつながりかねません。

この点、多くの企業が、労働問題への備えが十分とはいえない状況もあります。

労働紛争の予防のためには、社員との信頼関係・待遇の配慮等のマネージメントはもちろんですが、就業規則や労働契約書等の労働環境のルールの整備をしておくことが重要です。ルールを適切に整備しておくことで、根拠のない訴えを防ぐことができます。

また、経営者としては、何らかの問題が生じそうになったときは、ルールにそって解決をはかったと主張することも可能となります。労働者からの訴えに何らの配慮もせずに、ルールに沿わない処分をしてしまうと、深刻な紛争に発展し、かついかに労働者に非があっても経営者の主張が排斥されることになりかねません。

つまり、労働紛争が発生した場合は、企業として、紛争にいたるまでにいかにルールに沿った公平・公正な態度をとったのかが重要となります。

結果的に弁護士に依頼をすることで、就業規則・労働契約書の整備などの労働環境を整えることができます。顧問の社会保険労務士の先生がいらっしゃる場合は、意見交換・協力しながら取り組むことももちろん可能です。

多くの中小企業では、整備の重要性を理解しながらも、設立当初の就業規則・労働契約書から更新されていない現状があると思います。会社の実情、経営者の意見を反映させながら労働環境の整備を行うことをご検討ください。

社員の懲戒に関する対応

通常、会社の就業規則には、社員を懲戒する場合の懲戒条項が定められています。

就業規則に定められた懲戒条項は、例示ではなく限定的なものですので、規定された懲戒事項に該当しない場合、懲戒ができないことになります。社会状況は常に変化しており、社会状況の変化も踏まえた条項の整備が必要です。

なお、懲戒事項の限定を避けるために、末尾の条項で「その他前各号に準ずる行為があったとき」というような包括的な条項を定めている例もありますが、列挙されている個別事項と同じ程度に企業秩序を害する行為である必要となり、その適用を巡って争いになりかねず、包括事項を入れたとしても、包括事項の適用の前提となる個別事項の整備はやはり必要です。

では、懲戒条項に該当するとして、処分(減給、解雇等)は自由にしていいのでしょうか。

この点、過去の裁判例が集積されてきており、行為に対応する処分の基準が示されつつありますが、問題を起こした社員に与える影響その他企業活動に与える影響等を慎重に考慮検討しなければなりません。

一般に減給・降格、出勤停止、解雇と、社員に与える影響が大きくなるに連れて、より厳格・慎重な判断が求められますので、法律の専門家へご相談いただくことをお勧めいたします。

社員の解雇・整理

Q 社員を解雇したら、訴えられた。
Q 退職してもらうことが、会社にも本人にとってもいいと思うが、解雇する方法が分からない。

社員が中途で退職することは、会社にとってもそれまでの教育に投資した時間・費用の喪失、労働人口が減っていく中で補充する社員の採用へのコスト、残る社員の動揺等様々なリスクを伴います。

それでも会社にとって、その社員を雇用し続けることが会社にとってリスクを抱えることになる場合、使用者としては、その社員には辞めてもらうという決断をせざるを得ません。

使用者から社員に辞めてもらう方法は解雇であり、使用者から行う労働契約の解約です。
日本の労働法規・裁判例上、労働者の解雇を自由に行えるわけではありません。仮に会社の業務への適正がなかったり、勤務態度が悪い社員であっても簡単に解雇できるわけではありません。安易な解雇は、訴訟あるいは労働基準監督署からの指導等のリスクが増大します。

社員を解雇するためには、客観的で合理的な理由が求められます。

この客観的で合理的な理由とは、下記のようなものです。

  • 長期間の疾病により労務の提供ができないこと
  • 勤務態度の不良・社員としての適確性を欠き、会社が求める労務を提供できないこと
  • 労働契約の目的を達成できない能力不足
    など

仮に上記の理由に該当し、手続きも適正に行い、解雇をした場合でも解雇された側が納得していなければ、紛争になるリスクは残ります。

解雇はあくまでも最終手段であり、まずは労使双方が合意して円満に退職してもらう合意退職を目指すべきです。
そのためには、勤務態度や能力等に問題のある社員に対しては、指導・教育の実施・見直しを行った上で、その内容を書面で残しておきます。さらに、指導・教育による社員の変化も書面に残します。
それでも社員の適正・能力を欠く場合は、配置転換等の環境を変える措置をとり、その措置を取ったことも書面に残します。
最後に退職勧奨を行い、降格・降級も行います。
これらの措置をとっていく過程で、社員と十分な話し合いを行い、合意した内容を書面に残します。話し合い(面談)も後々紛争とならないよう2名以上で行い、面談の記録も残すようにしてください。

また、解雇するにあたっては、弁護士からは、労働法規・裁判例に照らして、解雇事由の客観性・合理性、手続きの適正について助言を得ることも可能です。
さらに、解雇を適正に行うためにも、労働環境を整えておくこともできます。

解雇は、会社にとっても社員にとっても不幸な出来事ですが、それが紛争化すると双方がさらに傷つくことにもなりかねません。

紛争を予防するためにも、お気軽にご相談ください。

残業代の未払い問題の解決

Q 社員から未払残業代を請求された
Q 労働基準監督署から警告書が届いた

残業代は、1日1日の金額は少額でも積み重なると高額となります。残業代の請求を受けた場合は、一般的には使用者側が不利な立場になりますし、刑事罰につながることもあります。
まずは、未払い残業代が生じないように労務・労働時間の管理を徹底すべきですが、社員からの未払残業代の請求を受けた場合は、誠実に対応することが求められます。労働時間に見合った成果がないなどと考えて請求を放置してしまうと労働基準監督署からの調査を受けることになりかねません。

一方で、労働時間に見合った成果がないと考えている場合は、不必要な時間外労働が含まれている可能性もあります。未払い残業代の請求を受けた場合は、労働者の労働実態・事実関係を整理し、適正な残業代を算出して、反論・対案を出すことも必要です。

ただし、未払残業代の請求を受けること自体、労働実態・事実関係の整理自体に時間・コストを要しますし、他の社員にも波及した結果、本来支払うべきものだったとしても支払を予定していない多額の経緯が発生することにもなりかねません。

請求を受けた場合は誠実・適正に対処することはもちろんですが、企業活動の実態に応じて就業規則等の労働環境を整備することが何よりも重要であり、平時こそにご相談いただくことで対策の選択肢が広がると考えます。

労働審判への対応

Q 任意に退職したはずの元社員から不当解雇だったとして労働審判の申立を受けた。
Q 退職した元社員から残業代の未払いで労働審判の申立を受けた。

労働審判は、一般の訴訟が長期化(1年以上)する傾向にあることから、労使双方にとって早期解決図るために設けられた制度です。
労働審判は、原則として3回以内の期日で結論が出され、特に初回期日には全ての主張・証拠の提出が求められますので、初回期日の期日が極めて重要となります。

この点、労働審判を起す側は、申立までに準備を重ねることができますが、起される側(会社側)は、一般に事前準備ができていないことが多く、申立後初回期日までの時間も限られています。
かといって初回期日までに十分な準備をしておかないと、初回期日で既に申立人側の主張を前提とした進行をされかねません。

労働審判の申立を受けたら速やかに弁護士に相談されて、予想される争点を整理し、その争点に対する主張・証拠を整理・提出する準備をすることが求められます。

また、申立を受ける可能性がある退職等があった場合も、証拠等が廃棄・紛失してしまわないように整理・保管をすることが必要です。

団体交渉・労働組合対応

Q 社員を解雇したら、労働組合から団体交渉の申し込みを受けた
Q 社内に労働組合ができて、団体交渉の申入れを受けた。

労働組合には、自社内の労働組合のほかに、社外の合同労組(ユニオンといいます)があり、これらの労働組合が団体交渉の申入れを行います。労働組合を主導する社員やユニオンの組合員の中には、経営者よりも労働関係法規への知識・経験が多いこともあります。

このため、事前準備なしに団体交渉に臨むと、組合主導で話し合いが進み、組合の要望を過度に受け入れざるを得ない状況に追い込まれることになりかねません。

団体交渉は労働者の権利であり、会社側としては誠実に対応することはもちろん必要ですが、団体交渉への対応は経営者側にとって物理的(時間)にも精神的にもストレスとなります。

紛争を未然に防ぐためにも就業規則等の整備を怠らず、申入れを受ける可能性を減らし、仮に申入れを受けた場合は、慌てることなく対応を検討する必要があります。

紛争を未然に防ぐためにもまずはお気軽にご相談ください。

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