熊本市内で飲食店を複数店舗経営しているX社のマネージャーAが、同じ熊本市内で飲食店を経営する会社を立ち上げ、X社の厨房スタッフを引き抜こうとしているようです。
Aの競合事業の設立を防止したり、引き抜きを防ぐことはできるでしょうか。
(検討)
1.事前の対応が不可欠
人が事業を始めたり、労働者を採用することは、職業選択・営業の自由として認められておりますので、直ちに競合事業の設立や従業員への勧誘を止めることはできません。
しかし、Aが在職中に既に準備を行い、引き抜きの勧誘行為をしていたのであれば、Aには労働契約上の職務に忠実である義務に違反していますので、事実関係を把握した上で警告等を行うことは可能です。
ただ、警告や損害賠償は事後的な対応になるため、勧誘等でスタッフに動揺や和が乱れたことへの修復に多大な労力を要する可能性もあります。
そこで、退職後の競合事業の設立を一定期間禁止(競業避止規定)するとともに従業員への勧誘・採用行動を禁止する就業規則・合意を結んでおくことが不可欠です。
2.事後的な対応方法
仮に事前の対応をしていなかった場合は、Aが上記のように在職中に声をかけている可能性があれば、労働契約上の義務に違反したとしてAに対する損害賠償請求を行うことになります。
在職中に声をかけていなかった場合は、かなりハードルが高くなりますが、勧誘行為の態様(X社への誹謗・中傷等)の悪質性に加えて、顧客名簿の持ち出し等の企業秘密の侵害等の事実を積み上げて賠償請求をしていくことが考えられます。